空中庭園  ~ Hanging Gardens ~

歌ってみた、演奏してみた動画を投稿する前に気を付けるべき著作権と楽曲利用の方法について

今回はniconico動画やYoutubeでよく見かける、歌ってみた、踊ってみた、演奏してみたといった動画の投稿やストリーミング配信を行う前に、気をつけなければいけない著作権について詳しく調べてまとめました。

2015/6/7に作成(2017/1/23更新)しましたが、今後変わっていく可能性があるのでご注意ください。

また、もし誤っている点などありましたらご指摘いただけますと幸いです。


まず注意が必要なのが、 動画やストリーミング配信、ブログや自分のサイトなどで曲を利用(演奏や歌ってみたも含む)・公開したり、 歌詞を載せたりする事は実は著作権侵害などの理由で利用が禁止されています。

しかしながらよく見かけるように【一定条件】の元でなら利用する事ができます。

みんなやっていてよく見かけるからといって、 何も知らないまま似たような事をしたら、うっかり著作権侵害をしてしまうことはよくあるので、 もし動画投稿やストリーミング配信を考えている方は楽曲の利用方法をしっかり理解してから利用するようにしましょう。

条件をクリアするため、動画投稿サイトとして有名どころのniconico動画、Youtube、ツイキャス、Ustreamの4ヵ所だけで話を行います。

これは、日本音楽著作権協会(JASRAC)、(株)イーライセンス、(株)ジャパン・ライツ・クリアランス(JRC)が、包括的利用許諾契約を締結している事が大きなポイントとなっています。

分かりやすく言うと、niconico動画、Youtube、Ustreamは楽曲を一定条件のもとで動画に利用する事を許可する代わりに、 一定の楽曲利用料を支払っているので、特定の条件のもとで楽曲を利用した【歌ってみた】、【踊ってみた】、【演奏してみた】といった動画の投稿が許可されているのです。
※ STICAMはJASRAC管轄曲というように、サイトにより利用できる楽曲の幅が異なります

この条件というのがまたシビアな話で長くなるため、 具体的な利用方法を【前提条件】のところでまとめていますので、使い方だけ知りたいという方は利用可能な具体例からの項目を参考にしてください。

そのため、他の動画投稿サイトなどで同じ動画を上げると【問題になる可能性が高い】ので気をつけましょう。
※ 包括的利用許諾契約を結んでいる動画投稿サイトなら大丈夫です
 更に、ニコニコ動画では独自に「許諾サービス」を提供しているため"原盤"も一定条件下で利用できることがあります

参考
JASRAC UGCサービスリスト
ニコニコ動画 許諾楽曲検索

もう少し具体的にみていきます。

まず、音楽ファイル(CD・DVD・Blu-rayやダウンロード販売)やTV放送、ネット配信、公式チャンネル動画で使用されている楽曲はその一部、または加工しても利用する事ができません。

利用するためには自分、または誰かが演奏した音源すべてを用意する必要があります。
※ 版権元で利用が許可されている場合は大丈夫です

重要なポイントを箇条書きでまとめましたのでご参考ください。

【前提条件】 ※ 1~3全てを満たす必要があります
1. 著作権管理団体(JASRAC、イーライセンス、JRC等)の管理楽曲であること
2. 公開されている音源を一部であっても直接利用しない事
3. 包括的利用許諾契約を結んでいるサービスであること(niconico動画、Youtube、Ustream、ツイキャスならOK)
【具体例】
4. 利用可能な具体例
5. ちょっと冒険、ここまでなら大丈夫?
6. これはNG

1. 著作権管理団体(JASRAC、イーライセンス、JRC)の管理楽曲であること


利用する楽曲が投稿サイトと包括的利用許諾契約を結んでいるJASRAC、イーライセンス、JRC等の管理楽曲である必要があります。

管理楽曲であるかどうかはJASRACではJ-WIDを、イーライセンスではこちらの作品検索を、JRCの管轄曲であればJRC 作品データベースの中から地道に探さなければいけません。

ここで、イーライセンスとJRCは2016年2月に事業統合し「NexTone」となりましたので、 2017年4月よりイーライセンスとJRCは一元化される予定です。
※ 契約約款や使用料規程が更新され、検索システムを刷新されると思われます

ここには歌詞も管轄であるかどうかが登録されますので、歌詞の利用を考えている場合は作詞の方も管轄曲であるかをよく確認するように注意しましょう。
※ 作詞家と歌手が異なる場合に歌詞だけ利用できない場合があります

日本の楽曲はJASRACが大半を占めていますので、まずはJ-WIDで検索してみるのが良いでしょう。


J-WIDの画面サンプル

上の画像は実際に検索した結果の一例ですが、 ここに各使用法について「J」や「#」、「未確認」等が記載されています。

この表の見方もまた大変ではあるのですが、「J」となっていれば特に問題はありません。

ただし・・・これにも穴があって、最新の楽曲がJASRACなどに登録されるのが実は結構遅れる可能性があります。

データベースが更新される頻度も年に4回ほど?という事も耳にしたので、 当然発売前、発売直後で使いたいけど作品が出てこないという事があります。

そして残念ながら楽曲を見つけられない場合は、利用が認められない楽曲である可能性があります。

使いたい曲が見つからない場合や、楽曲の管理団体が別にある場合は管理団体に直接問い合わせて確認するのが良いと思います。

2. 公開されている音源を直接利用しない事


ダウンロード販売や公式PV、当然違法アップロードの楽曲についても、 これらを自分の動画の楽曲としてほんの一部であったとしても利用する事はできません。

投稿するためには、他の方が【演奏してみた】等のすべて自前で音源を用意したものを使わせてもらわなければいけないので注意が必要です。

同じ投稿サイト内(ニコニコ動画であれば、ニコニコ動画内で音源を借りる)であれば概ね問題はないものと思います。

niconico動画の場合はコンテンツツリーで親作品を指定できるので、 誰かが作成した「演奏してみた」などの曲を利用する事ができますが、 きちんとコンテンツツリーで親作品の登録を忘れないようにしましょう。

3. 包括的利用許諾契約を結んでいるサービスであること(niconico動画、Youtube、Ustream、ツイキャスならOK)


せっかくデータベースに楽曲が登録され利用が許可されていても、 投稿先のサービスが包括的利用許諾契約を結んでいなければ配信することができません。

投稿、または配信するサービスがきちんと包括的利用許諾契約を結んでいるサービスであるかどうかを確認しましょう。

・ JASRACの楽曲を投稿できるサービス一覧
利用許諾契約を締結しているUGCサービスリストの公表について

また、ニコニコ動画では「原盤」も一定条件下で利用することができる楽曲が存在しています。
ニコニコ動画 許諾楽曲検索

4. 利用可能な具体例


文字ばかりで疲れてきた上に、イマイチどう使えば良いかピンと来ないかもしれませんので、分かりやすく具体例を列挙していきます。

前提条件の1~3全てを満たしている必要があります。

○ 自分で楽器を演奏した部分だけを動画として投稿
○ アカペラやVocaloidで歌った動画を投稿
○ 耳コピした曲を自分の音源で演奏・MIXした動画を投稿(DTMも演奏に入ります)
○ 演奏した動画に歌詞を載せる(ニコカラ動画等)
○ 他の人が演奏した動画を借りて、自分の歌や演奏を合わせた動画を投稿
※ ただし、場合によっては投稿者に確認や許可をもらった方が良い場合もあります
○ 他の人の演奏動画にVocaloidで歌わせた動画を投稿
○ 他の人の演奏動画と、他の人の歌ってみた動画を合わせた動画を投稿
※ カテゴリツリーで親作品の登録を行い、またそれぞれ本人にも許可をもらいましょう

動画に使われた映像や画像の利用については、別の話になるので注意してください

5. ちょっと冒険、ここまでなら大丈夫?


これは安全とは言い難い、ちょっと冒険した利用の仕方です。

場合によっては著作権侵害や著作権法違反になったりする可能性もありますので、自己の責任の下で判断しましょう。

今は著作権法違反は「親告罪」ですが、将来的には「非親告罪」に変更されるかもしれません。
「親告罪」というのは著作者が訴えない限りは違法ではないのですが、「非親告罪」になると著作者が許可していても違法となる可能性が出てしまうものです。
もし「非親告罪」として法が施行されるようになる場合はニュースでも大々的に取り上げられると思います


○ 発売されたばかりの曲のためデータベースには存在していないが、恐らくはJASRAC、イーライセンス、JRCに登録される楽曲なので4の「利用可能な具体例」のようにして動画を投稿
例えば、「UNISON SQUARE GARDEN」の「シュガーソングとビターステップ」、調べてみましたがデータベースで見つけられませんでした。(2015年6月時点)
しかしながら、UNISON SQUARE GARDENの他の楽曲はJASRACの管理楽曲なので、 新曲の「シュガーソングとビターステップ」も直に登録される事を予想して、 先に歌ったり演奏したりした動画を投稿するといった内容です。

現状ではこの方法で特に問題が起こったという話は聞いたことがありません。
△ 楽曲がマニアック、または古すぎてどこの管轄か分からない、データベースに登録されていない曲を4の「利用可能な具体例」のようにして動画を投稿
例えば、レトロゲームの曲をアレンジしたりするなどでしょうか。
この場合もなかなか判断が難しいところではありますが、問題になる事は殆どないような気がします。
しかしながら、2017年1月に童謡の「森のくまさん」の替え歌をCDで販売したことに対し、歌詞の部分(著作人格権)で裁判が発生しています。 この件の争点は歌詞の改変についてですが、思わぬところでトラブルになる可能性があるという事を忘れないようにした方が良いかもしれません。
△~× 包括的利用許諾契約を結んでいないレーベルの曲を4の「利用可能な具体例」のようにして動画を投稿
これはとても難しいケースに該当します。
中には作曲者本人がオープンにしている場合もありますが、管轄が違う場合はなかなか調べることができません。
利用の仕方にも依りますので、著作権者も喜びそうな利用を心がければ問題はないと思います。

6. これはNG


× 背景BGMにCD音源(ダウンロード販売やPV、番組、ラジオ中の音源を含む)を流して、楽器で演奏した音を重ねた動画を投稿
※ ニコニコ動画の許諾楽曲などで許可されている場合を除く
× 背景BGMにCD音源(ダウンロード販売やPV、番組、ラジオ中の音源を含む)のVocalのないカラオケVer.、インストVer.を流して、自分で歌った声を重ねた動画を投稿
これらはピッチを代えたりリズムを代えたり、音を加工するなどどれだけ編集してもダメです。
× 楽曲のボーカル部分(歌声部分)だけを抜き出し、自分の「演奏してみた」や打ち込みの「カラオケ動画」に重ねて投稿

これは最近よく見かけるようになり、また動画が消されてはいないですが「原曲の音源を加工して利用」しているのでNGです。
この逆のVocalを消して歌をのせるのもNGです。
みんなやっているから、消されないから大丈夫とは思わず、明確に許可されていない利用の方法ですのでご注意ください。
× 購入した楽曲の音源をスピーカー等から流して踊ってみたのダンスを撮影して利用
△~× 4の「利用可能な具体例」で作成された動画をブログなどに埋め込む
繊細な問題なので扱いが難しいですが、ブログへの埋め込み利用はまた動画の投稿とは別の意味で注意が必要となります。
例え動画の投稿が許可されていても、自分の動画をブログへ埋め込む事で問題になる可能性(著作隣接権等)がありますので注意が必要です。


微妙にもう少し突っ込んでの利用を考えるともう少し掘り下げる事はできるのですが、 基準がより曖昧になりリスクも出てくるので安全なラインでの利用を心がけてください。

最後に、上で説明したようにしっかりと調べて利用する限り問題はないのですが、 著作権管理団体とは別に著作権や著作隣接権の話が別に存在している事を忘れてはいけません。

作曲者やアーティスト、所属団体が異議申し立てを行えばいくら包括的利用許諾契約を結んでいるといっても利用する事はできなくなってしまうので、 【利用できる事が必ずしも保障されているわけではない】という事を忘れないようにしましょう。

これだけ抑えておけばもう大丈夫ではないでしょうか。
窮屈に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、 以前に比べればとても自由に利用できる環境になりましたので、 正しい利用方法で楽しく活動していきましょう。

他にも関連しそうな内容についてまとめてみましたので興味がありましたらご参考ください。

Youtubeやニコニコ動画の埋め込み利用における著作権等の扱いについて

アニメキャプチャ画像の使用と著作権近辺について

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